書籍 新・観光立国論の感想

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書籍 新・観光立国論の読書感想文


デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」

『新・観光立国論』
著者デービッド アトキンソン
出版日2015/06/05 出版社東洋経済新報社

概要

日本の観光戦略について日本に住んでいながらも外国人目線で書かれた本です。

著者のデービット アトキンソンさんのこのシリーズは読みやすくデータの読み方にも注意されてるので説得力があります。

日本のビジネスについての疑問点や課題を明確に書いており、観光に限らず、どの業界においても共通する部分にスポットを当てています。

観光戦略に重要なのは「気候」「自然」「文化」「食事」というリソースが揃うこと。

この条件が日本には揃っているにも関わらず活かしきれていない、むしろ、おもてなしや鉄道の正確さや治安、アニメ文化など一部でしか求められていない要素を日本は推している大多数の外国人観光客から見て的外れな戦略を指摘をしてます。

一番大切なのはお金を落としてもらうためにどうすればいいのかを具体的な提言が書かれています。

既存のリソースをどのように使うか、不足しているインフラの必要性、また狙う観光客層を質の高めるためのコンテンツの戦術も並べられています。

感想文

観光業や観光地域に携わる方はもちろん、通常の飲食店でも外国人のお客さんは増えているなら一読して、自分の仕事がどうなのかを問うことをオススメします。

ひと言で、当たり前のことを当たり前にできていない日本の観光戦略を考えさせられました。

そもそも受け入れる準備ができないまま外国人観光客をを増やそうとしている、実際に増加しているがリピーターを作ることができていないのではないかと思ってしまう程、厳しい内容でしたが「言われてみればそうだよな」ということばかりです。

同時に経済効果についても観光客が来るから稼げるというわけではない、稼ぐ方法をもっと国も個人も含めて工夫していく余地があると思いました。

今年(2017年)の外国人観光客伸び率が大阪は世界一になりました。

だからと言ってこの本の内容に沿って、日本の観光戦略が見直されて成長した結果とは考えにくいです。

ほとんどが中国と韓国、台湾人と著者の指摘通り短期的滞在層で、僕自身は大阪に済んでいますが欧州やアメリカなどの観光客を見かけることは、珍しく感じるほど比率は低いという感覚です。

経済効果は確かにありますが、費用対効果という視点、いわば生産性を見たときにまだまだ低いと思わざるを得ない現状です。

この前置きを僕が書いたのは、著者が鋭い指摘をしているからです。

外国人観光客が買い物目的で日本に来ても、その製造元は中国やアジアである、つまり経済的な流れを考えると稼いだお金を海外に流出していることが問題であるということです。

外国人観光客は、どこの国が多いかを見てみる。

JNTO『2017年10月推計値』から引用

ほとんどアジア系ですね。

アジア人はそもそも文化や自然といった観光資源に興味はなく、短期滞在でテーマパークや買い物といったことが中心ということで、指摘の通り国別で見ると稼いでも歩留まりが悪いと。

そこで解決するのが、長期滞在のコンテンツが必要があること。

特に自然体験や文化体験というのは稼いだお金の流出が少なくなり、観光地域で循環し、さらに稼げる環境に投資することで地域経済にも有効ということには、納得がいきます。

産業である限り外貨獲得は必要ということを改めて確認することができます。というよりもこれが一番大切なこと。

より多く稼いだ額を手元に残す構造を作るのがこれからの課題です。

観光業は世界から見ても成長している産業であり、その効果をより大きなものにするにはどう取り組むべきか。

これがこの本の一番読む意味です。

他の業種でも同じ様なことが起きていますので、直接関係ない仕事に従事している場合も観光の話と思わず顧客に対して自社の価値観を見直すきっかけになると思います。

そしてもう1点、注目点として、ゴールデンウイークのような長期休暇において、ただ捌くだけの観光地は今や日本人でさえ敬遠されつつあるのも、温泉地の衰退ニュースなど見ても明らかです。

ただでさえ団体旅行などは減り、個人が好きなプランのもと旅行をする時代に供給側が環境の変化、ニーズの変化についていけていないことを反省しなければいけませんね。

供給側の都合に当てはめて、顧客にテンプレート化したサービスしか提供できない観光地は、もはや必要とされていないのでしょう。

(朝も晩も夕食時間が決められている、温泉の時間も決められている、閑散期に目当ての食事が用意されない、おみやげも高いだけで良質なものがない等々)

良い印象がない、感動がないままであれば二度とその地には訪れないのは明確です。

かという僕自身も改めて、親切な対応をする店を作っていかなければいけないと反省しきりです。

観光業だけではなく、店舗経営者はもちろん行政関係者の方々も一読して頂ければと思います。

まとめ

まさに書かれている通り日本人なら通用するビジネスや観光政策をそのまま外国人に適用していこうという姿勢に無理があるのは当たり前ですね。

しかし、改めて客観的に見ていくためにはこの本のような提言を受け入れる必要があるのかもしれません。

それには投資も必要になるでしょうし、「日本独自の価値観」を外国人観光客に押し付けることは、善意の行為であっても親切の押し売りになたりと観光産業にかぎらず、サービス業全体で自店はどうなのかを考えることができる本です。

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