テナント出店の家賃の適正はおおよそ売上の10~15%と言われています。当然立地条件により差はありますから一概に決めることはできませんが、通常のビジネスモデルから考えると20%以上を超えると重くなります。
売上が好調ならばさほど問題にはなりませんが、不調に陥るとこれが問題で閉店になる原因にもなりかねません。
店舗運営に大きな影響を与える家賃を下げることができれば、いいと思いませんか?
「そんなことできない。」
「なんだか難しそう。」
「契約書に家賃の金額を明記しているから無理では?」
と考えてしまいがちですが、家賃の減額は実は可能です。その方法は、家賃の仕組を知ること、再交渉する材料を揃えるということ、オーナーとの接触を積極的にすることです。確実ではありませんが、多くの場合は家賃交渉は可能になります。それではひとつずつ見ていきましょう。
目次
家賃の仕組み
家賃の仕組みは借りた側が貸した側に利用料金を支払うということです。当たり前ですね。しかし、この関係を簡単に考えてみることが重要です。借主はいわゆるお客さんです。つまりあなたがお客さんです。
貸した側はテナント、もしくは建屋、土地というスペースを提供するサービス提供側です。これを複雑に感じさせてしまうのが不動産会社、管理会社という存在です。
また家賃はそもそも金額の決定の仕方、基準というのはどのように決定しているのかを知ることも重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
借主は立場が弱いのか
結論から言えば弱くないです。付け加えるのであれば、家賃交渉を憶する必要はありません。そもそも人口増加時代からバブル時までは、事業者数に対して、テナント数が少ない状況だったので需給ギャップを考えると
「テナントオーナー>入居者」
という構図が出来上がってました。そのため家賃の値引きを交渉しようものなら出ていってもらっても構わないぐらいの強気でした。しかし現在では空き家問題やシャッター商店街などの問題をご存知だと思いますが、
「テナントオーナー<入居者」
と変化してきています。つまり余程の好立地でない限り次のテナントが入居するまで、物件自体は無収入で維持管理費が掛かる負債になるということです。当然新しい入居者が決まっても新たに不動産会社仲介であれば広告料という名目で入居者紹介料が家賃の約1か月程度掛かることもあります。それならば多少の家賃減額が発生しても継続して入居してもらうという賢明な判断をすオーナーが多いです。
基本的に不動産オーナーはお金の困っていることはありません。そもそも困っていたら物件自体を手放しているため、経費ばかりを軸にして提案しても取り付く島もないこともあります。なんだかんだプライドが高くて偉そうな人も多いですし。僕自身は、こういう人を相手にしても仕方ないと思います。この場合は管理会社を挟んでの交渉がいいと思います。
ここでは詳しく説明しませんが、借地借家法という法律では強烈な位に賃貸人を保護しています。「家賃を下げる言う位なら出ていってくれ」というような人も居るかもしれませんが、法的な根拠がない限り(滞納が多いなど)不可能ですので、心配はいりません。そもそもそういうオーナーは困ったことがあっても相談にも乗ってくれませんので、どこかの段階で移転することも考えておきましょう。
飲食店家賃の目安を知る
家賃の金額は、オーナーが決定します。しかし余程でない限りは下記の方法が中心で考慮されています。
- 近隣物件と比較
- 償却額との兼ね合い(ローン返済額が毎月ある為にそれに上乗せすることも含みます)
- 昔の金額から下げる気がなく建築時、もしくは購入時からそのままの額を基準にしている
- 前のテナントと同額で特に考えていない
- 仲介する不動産会社の助言。というより任せっきりで自身の関与度は低い
などが挙げられます。まずは近隣のテナント家賃が幾らくらいかを調べてみましょう。今であれば、インターネットの不動産サイトでも調べられますし、不動産会社に訪問してみて近隣の物件を紹介してもらうのもいいでしょう。
飲食店の家賃目安を客観的に算出してみる
毎年8月に国税庁から【路線価】が発表されます。【路線価】とは路線(不特定多数が通行する道路)に面する宅地1平方メートル当たりの土地評価額を表します。相続税や贈与税の課税価格を計算する目安となります。簡単にいえば土地の価値ですね。
この路線価を目安に同様の数字(路線価)の物件がまず幾らなのかを調べます。例えば駅前が100としてあなたの店が80とします。ここでは単純に考えて同程度の店舗の広さであれば100分の80、つまり金額で駅前物件の8割程度の家賃が適正な家賃目安となります。注意しなければいけないのは1軒だけでなく数軒比較しましょう。駅前の店舗が適正とは限りませんので、多数比較することがより正確性を増します。
路線価は過去5年調べることができます(図書館ならさらに過去も調べられます)ので、土地の価値を経年で見て価値が下がっていれば家賃下げる根拠の一つになります。
同じ様な店舗規模がない場合やより詳しく調べる場合、坪単価で計算します。不動産サイトや不動産情報には必ず坪数が明記されているので
総家賃÷総坪数=坪単価
で計算します。この坪単価が路線価を掛けて8割程度ならば飲食店家賃目安としては適正でしょう。
また物件も築年数によって当然ながら価格が変わります。新築であれば高く、古くなれば家賃は下がります。それは物件が経年することで建築物自体の価値が減少していくので、古ければ古い程安くなるのは通常は当然です。ここでは耐用年数を考えてどのくらい減価償却が進んでいるかを確認します。
耐用年数は簡単にいうと価値が何年間で0になるかを法的に決定したものと考えてください。例えば鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の飲食店(木造内装30%以上の場合)は34年です。話を簡単にするため新築時には建物自体(土地は含みません)の価値が3400万円とします。これが34年間かけて無価値に進むというものです。
現時点で仮に築20年ならば毎年100万円ずつ価値減少しますので、現在は1400万円の価値です。来年は1300万円です。
このように毎年建物の価値は減少していきますので、理論上は毎年家賃が値下がりすることが当たり前です。
耐用年数はこちらから検索できます。
上記に様に家賃構造を知るには、土地と建物の現在の価値を調べることである程度わかります。交渉する場合には具体的な数字を持っていることが説得力を生みますし、オーナーも現在の物件環境が分かりますので調べておきましょう。価値に法的根拠を持たせるなら不動産鑑定士への依頼しますが、コストがかかりすぎるのと、それでも家賃の決定権はオーナー側にありますから、あなた自身で分かる範囲で取り掛かりましょう。
家賃交渉は信頼関係の構築が一番
家賃を下げる交渉では、信頼関係があることが大切です。もちろん、理論的に話すことは求められますが、聞いてもらえないようでは元も子もないです。お互い不動産管理会社に任せっきりとせず、普段からコミュニケーションを持つ心掛けをしましょう。
用事がある時は金が掛かることだけ言ってくるという印象持たれると家賃交渉どころか修繕時にもトラブルを招く可能性があります。やはり人間対人間なので、関係を良好に持つことに越したことはないですね。
信頼されるにはルールを守ること
当たり前のことですが、契約時や常識レベルでルールを守っていることが前提です。
- 家賃支払期限遵守
- 景観を守る店舗外観
- 共用部の整理整頓
- 設備損傷の際の迅速な連絡
- 会った時の挨拶、会話
等々
当然のことを当然として継続して積み重ねることですね。特に家賃滞納だけは避けなけばいけません。オーナー側も商売ですので、滞納は信頼も何もなくなります。
短期間で信頼関係を築く方法
入居しての期間が2~3年以上ならば家賃交渉はできる下地はあるでしょうが、それでも心配な場合はオーナーと交渉以外で会う方法を考えていく必要があります。
具体的には
①年明けや年末の挨拶に伺う。遠方や時間がない場合は年賀状などでも効果あります。
②飲食店なので自店に招待して無料で食事を提供。3か月に1度位、優待制度として招待してもいいかもしれません。そこでお店の相談などもできる機会があるでしょうし、自店を応援してくれるきっかけになります。
③オーナーにとって役立つ情報を伝える。例えば、趣味や仕事、子供など身近なもので構わないが、これなら役立つと思うことを教えてあげましょう。あくまでここはオーナーにとってのメリットであり、「近隣のオーナーはもっと修繕してますよ」みたいな情報操作のように下心持たないことです。ばれてしまっては信頼どころではありません。
まとめ
飲食店に限らず、家賃を下げる方法は物件を客観的に評価することと、信頼関係が必要となります。安易に理屈で説得してもうまくいきませんし両輪をうまく使うことが重要です。家賃が適正である場合、それでも商売が苦しい時は素直に相談して、1年後には適正家賃に戻すなど柔軟な交渉も一考してもいいかもしれません。不当に高く感じる家賃に関しては、下げる努力を惜しまないようにしましょう。
よく家賃を下げる業者などがインターネットでも見かけますが、個人のオーナーが相手では厳しいのではないかと思います。多くは対デベロッパーや不動産会社所有物件が対象です。運よく下がってもその経費を支払ってまで費用対効果とオーナーからの信頼構築を捨てるという二重のコストを天秤にかけることを熟考しましょう。