外国人労働者を採用する時の問題や流れを工場経営者に聞いてみた。

旋盤

外国人労働者の受け入れ人数拡大されることになりました。これまでもかなり増加してきたのですが。人手不足感が社会問題化してきているということですね。

そこで今回は、実際に外国人を雇用している企業に話を聞いてみようと思います。

僕の知り合いに町工場を営む社長(2代目)がいるんですが、実は技能実習生という制度名が付く前の研修生制度の時代から外国人を自社に招いて仕事をしてもらっているんですよね。

そこで今回は、そこで聞いた外国人を雇用し続けてきた生の声と僕自身のクドイ?質問を織り交ぜて、外国人労働者雇用の実態をお伝えしたいと思います。

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外国人労働者は以前から存在している

ここからは、会話形式で実態を聞いていくことにしましょう。

ーそれではお願いします。外国人労働者を雇用するきっかけは何が契機だったんですか?

町工場のオヤジ社長(以降略)「15年くらい前かな。最初のきっかけはアルバイトを募集していたんだけど、そこたまたま中 国人の留学生を採用したんだ」

ー外国人留学生のアルバイトであれば、昔から週28時間以内で雇用できましたもんね。

「応募してきたのが彼(中国人)だけだったし、日本語も喋れてたからね。」

ー初めて外国人を採用して戸惑ったことはなかったですか?

「会話はたまに難しい言葉の理解はできなかったから、仕事を教える時に分かりやすい表現が必要だったね。ただ、技能職だからその場でやって見せたら覚えてくるよ。それに、外国からわざわざ日本に来るぐらいだからそれなりに頭が良い人だったのもあるだろうね。」

ーなるほど。それからずっと外国人を採用してきたんですか?

「いや。リーマンショックまでは日本人のみだったよ。うちの業界だけ世間は冷え込んでたけど、特需があったので。この時は採用には苦労しなかった。」

ーそれならば何故外国人を採用することになったのですか?

「リーマンショックから暫くは問題なく採用してたけど、会社自体を移転することになってそこで一悶着あったんだよ。それで数名の日本人従業員が去っていってしまった。まあ、これは会社の事情で、俺の責任なんだけども。」

ーその去っていった人の代わりが外国人労働者(技能実習生)だったということですか。

「そういうことになるね。リーマンショックが落ち着いて景気が上向きになった時に募集しても人が来なかったんだ。地方都市で車がないと通勤できないような場所だったし。しかし、数名去るとどうしても業務に支障が出てきてしまう。頭を抱えているちょうどその時に事業協同組合から電話がかかってきたんだ。」

ー事業協同組合は技能実習生を監理する団体ですね。

「そう。ウチでハローワークで求人出してるのを見て電話してきたらしい。」

ー人材を斡旋しますと?

「そういうことだね。なにしろこちらは人が居ないんでね。求めてるのは派遣会社や紹介会社にしてカウンセラーの話聞いたりして登録するよう職種でもないし。現場の職人とか技術職だからね。一度話を聞いてみようかとなったわけ。」

ー社長はその時点で外国人労働者ってのは分かってたのですか?

「分かってはいたんだけども、詳しいことは何も知らないからね。とにかく話を聞いてみるしかないなと。」

ーなるほど。そこで具体的に外国人労働者、つまり技能実習生の話を聞くわけですね。

「正直な所、外国人でもあるし、当時は発展途上国の人たちが来るわけだから給与も抑えられるだろうし、仕事の適応が難しいようならば途中で帰国させるなり解雇させられると思ってたんだ。」

ー日本人でも解雇はできますから、外国人も適用できると思いますものね。

「決して外国人だから差別するっていうわけではないけれども、どうしても語学のハンデはあるし、国籍に限らず仕事できない人を雇用できるほど我々中小企業は余力なんてないからね。」



雇用人数に制限がある

ー外国人技能実習生は労働力ではなく、飽くまでも途上国の人材が企業で働きながら技術を学び自国に技術を転移するという名目で、給与をはじめとする雇用条件が日本人と同条件の必要があるわけです。しかも当時は転職の自由がない(入管法改正で条件クリアで転職可能)代わりに解雇は不可能。実習に来ているわけですからね。

「聞いたときにはさすがに難しい条件だなと思ったよ。自国でプロとしてバリバリやっている人が来るならばその条件もわかるけれども、半年くらい研修して日本に送り出してくる。しかも日本語も半年以内だから実質素人を採用するわけだから。」

ーそれでも採用した理由は採用ができなかったからですか?

「それもあるけれど、実際にベトナム(この企業はベトナム人中心)に行って送り出し機関で面接をしたんだ。そこで技能実習生を導入することに決めたんだ。」

ー決め手は何だったんですか?

「面接の内容は日本語で話したんだけれども、彼らは熱心に勉強しているからそれなりに話できたからね。我々日本人の英語と同じで聞き取ることはできるけど話すのは難しい。それと同じだったので慣れればコミュニケーションでは思っている程、難しいわけではないなと。」

ーなるほど。

「面接だけではなく、実際研修で身につけた技術を実際に見せてもらうんだよ。職種にもよるだろうけども技術職は個人差が分かりやすいからね。全く無知の状態から教えるのは大変だけども基礎は分かっているのも大きかったね。機械の使い方だけ教えるのも大変だし。」

ー実際、過去に中国人留学生を採用してましたものね。その経験があったから積極的になれたのもあるでしょうね。

「そうなんだ。もちろん、留学生アルバイトとは違うからそれなりにリスクは背負うことになるけれども、覚悟を決めることが出来たね。後々考えると辞めることができないっていうのがあったのも大きかったね」

ー当時は3年間は帰国出来ず、実習先で従事する規則でしたからね。

「どうしても現場のウチみたいな製造業になると日本人はもはや、やりたがらない仕事になりつつあるからね。辞める自由もあるし、他の企業にいくらでも求人もあるからね。考え方次第だけども3年間は確実に居てくれるという方向に考えることにした。」

ーなるほど。それで受け入れることになるんですね。

「まず3名。企業の従業員に対して受け入れられる人数は限られているのもあったんでね。」

実習受け入れ人数

厚生労働省から引用

ー上記の様に、規模によって違いますね。

「1年間での限度なんで、3年間でこの人数の3倍が限度人数。今回の入管法改正で5年滞在への移行も監理団体によって出来るから、ウチみたいな零細企業でも15名が外国人でもいいとなる。そんなにいらないけどね笑」



外国人労働者を受け入れる準備

ー受け入れるに当たっての準備などはあったのですか。

「企業側が外国人技能実習生を受け入れるのは、手続き書類が結構あるので監理団体の組合が用意するものを提出していくことになるね。」

ー実務的な準備もあれば教えてください。

「まず、住む所を用意しておかなくてはいけない。大企業なら寮などあるんだろうけども、中小企業にはない場合多いからね。」

ー確かに、外国人がいきなり個人で賃貸契約を結べる可能性は少ないでしょうね。特に契約書の日本語なんか難しいわけで。

「そもそも住む場所は企業側が用意する規則があるんでね。タコ部屋じゃダメだし笑」

※1名に付き4.5平方メートルの寝室スペースが必須。(3畳)

ー契約は法人?

「もちろん。敷金などの初期費用も会社だよ。後は寮費として実習生が払うようにしているけどもウチは半額負担でいいとしているよ。半分は福利厚生としてる。」

ー例えば2名で住めば、さらに半分の実質額は、家賃の4分の1でいいわけですね。

「彼らは稼ぎに来ているから負担は少ない方がいいだろうってね。もちろん、規則があるから大人数を詰め込むのはアウトだけどね。」

給料は日本人と同条件で競争が生まれている

ー給与も日本人と同等以上ですが。

「といっても、基本は最低賃金の時給換算にしている。これまでは、それで良かったけども同一職種、共通性のある仕事は転職が可能になるから給与も上がっていくだろうね。」

ーこれからは外国人技能実習生でさえ取り合いになることもあると。

「間違いないね。そもそも少し前は日本に来たいという外国人は多かったけども、アジアも豊かになりつつあるし、韓国や台湾などはもっと規制が緩く10年働ける所もあるくらいだから、国家間でも競争になっているのが現状だね。」

ーそれは知りませんでした。海外でも需要は高いということなんですね。

「それこそ中国人が大半を占めていたのが、いまや東南アジアが中心になっているし、ベトナムが中心かな。」

ーベトナム自体が国の産業として人材輸出と言いきってますからね。それでも人口に限りはあるわけですから、当然これから日本だけでなく韓国、中国も高齢化は進む。競争は進む一方かもしれませんね。

「給与は日本人、外国人問わずに上がる構造があるということだから、人手不足だからといって採用するのでなく、本業の売上、利益をどう上げるかを考えて、その為に必要か否かで外国人労働者を受け入れると考えた方がいい時代になるよ。」

外国人労働者を採用するコストはどれくらい?

ー増加する人件費をIT技術、AI導入に回す検討をしてもいいかもしれませんね。機械化できる部分や業務オペレーションの改善で人を減らすこともできるかもしれませんし。

「給与は最低賃金でも、受け入れ企業側はこちらへ来る渡航費やら講習費、書類作成費など初期費用だけでも結構かかる。実際、1名に付き50万円前後は掛かる。人数3名で150万円。結構な金額だろう。」

ー1名の採用費用としては結構高いです。それでも今は頼らないといけないんですが。

「初期費用で掛かる費用だけでなく、監理団体である事業協同組合にも管理費を取られる。」

ーと、おっしゃいますと。

「毎月、1名に付き3〜6万円掛かるんだ。管理費というのは外国人の生活サポートや通訳など含めたサービスでこれを支払わないといけない。これに社会保険費用もかかるわけだから、正直日本人よりも総額の人件費は高い場合も多々ある。」

ー管理費が例えば月に5万円として、人数分で月15万円。社会保険も半額を企業側負担ですから、3名で20万円の上乗せなら、利益率を圧迫する原因になりかねませんね。管理費にばらつきがあるのはなぜでしょうか。

「事業協同組合によって金額が変わるんだよね。安い、高いの問題。ただ、安いと本当に何もしてくれない。ウチは安い事業協同組合にお願いしているけど、それはこれまで外国人を採用していたノウハウがあるからできる。」

ーほとんど外国人労働者を採用したことない場合は大変だということですか。

「毎年、書類をたくさん提出しなくてはいけないし、実習計画や進捗なども必要になるので、それをできる企業ならいいけども、ほとんど採用したことのない企業は大変な業務負担になる可能性があるので、安いからいいわけではないということ。」

ーそこは斡旋先の事業協同組合によく確認しておかないといけませんね。

「まあ、といっても高いから良いというわけでもないんだな、これが。結局事業協同組合も実習生が増加して管理キャパを超えている。それで全国飛び回ってますとか言ってるから細かなサポートなんかしてないよ。月に1回でも顔見せたらマシな方。」

ーこれからもっとサービスレベルは下がりますね。5年(2024年)で倍増するつもりですし。かといって事業協同組合の認可もなかなか難しいですから、既存団体のキャパ超え確実です。

「管理費の条件を確認することは絶対必要だな。あれはします、これはしませんということを明文化しておかないと後から問題になる。これは経験上、必要だぞ。金だけ取って何もしませんみたいな所は山ほどあるからな(主観)」

ーここまでをまとめると外国人労働者といって安価な労働力と見ることはできないということですね。安易に手を出すと本業の利益を圧迫する可能性もあるわけで。しかし、採用できないままでも業務に支障がでるというジレンマが生まれる。そこでIT、AIの検討も選択肢に入れる必要があるということですね。

「まさにその通りで、我々のような中小企業にとっては難しい選択になるんだ。もちろん、製造業以外でも同じで第一次産業でも、第三次産業でもね。」

実際仕事する上での問題点

ー話は変わりますが、外国人労働者を雇用するに当たっての仕事上の問題はありますか。

「もちろん、日本語の問題が大きい。1年目は特にね。慣れてれば問題はなくなる。ただ、通訳できるようなサービスがあるなら準備しておいたほうがいいかもしれない。病気とか怪我になると病院に連れていかないといけないからね。」

ー日本語以外にはありますか。

「まず、宗教を持っている場合はこちらが理解してあげる必要があるね。例えばイスラム教なんかは時間が来たらお祈りをする必要があるし。」

ー文化の違いもありそうですね。

「日常生活ルールは教えればいいけれども、根本的な思考は海外と日本じゃ違うからな。会社のためになんて言っても通じない。彼らは自分の待遇向上を求めているし、繰り返すけども稼ぎにきているわけだから。」

ーやはり仕送りなどもしているわけですから、サービス残業的なちょっとやっときますね。は通じないんですね。

「出世があるわけでもないし、こんなにSNSも発達しているわけだから法令遵守には気を配らないといけない。」

ー日本人もですよ笑

「働き方改革だからね笑。冗談はともかく、実は彼らは母国で借金をしてきている場合が多い。昔よりは額は少ないけども、それでも多少なりの借金を背負って稼ぎに来ているんだ。」

ー借金ですか。それはいわゆる・・・

「ブローカーの存在だね。日本も対策しているし、送り出し国も同様に対策しているけども、やはりベトナムの田舎とかになると行き届かない。」

ー少し詳しく教えていただけますか。

「ブローカーは、日本に出稼ぎに行かないか?と勧誘するんだよ。田舎の若者などを誘って技能実習生候補を集めるんだ。まだベトナムなどの田舎では仕事は少ないので当然仕事を欲しがっている。社会主義国だからなかなか貧しさを解決できていない。」

ーそれを送り出し機関に紹介するわけですね。

送り出し機関様子

※送り出し機関とは監理団体の送り出し側の相手のこと。実際の技能実習生を募集し、日本に送り込んでくる組織。(イメージで言えば研修施設で生活する合宿所みたいな所)

「そうだ。そこで、送り出し機関は候補生に寮費や実習費用が掛かるからお金を用意しろという。それも多額な場合100万円以上。ベトナムの平均年収が30万円あるかどうかだから、3〜4年の年収になるわけだ。」

ーそれを借金するんですか?出稼ぎの為に。

「そこをブローカーと送り出し機関が組んで、日本で働けば100万円なんて1年も働けば溜まるといって騙すんだ。月20〜30万円は貰えると。」

ー生活費や仕送りを考えると厳しいですね。100万円を1年とは。

「実際無理だよ。しかし、稼げるからといって借金をさせる。もちろん、タダで借りれるわけでなく、実家はもちろん親戚の土地や田畑まで担保に入れてまで。当然、ブローカーを信じて日本で働くと借金はすぐ返せるものだと思って来日してくる。」

ーしかし、日本に来て低賃金であると知ると騙されたと気づいても手遅れなわけですね。

「その通り!それが許せなくてね。結局、若者の人生を犠牲にしてブローカーと送り出し機関が暴利を貪っているわけだ。」

ーブローカーは紹介手数料、送り出し機関は余りある研修費という名の利益ですね。

「その結果、人生が壊れていくような人もたくさんいるんだからね。これは受け入れ側にも責任があるんだけれども、どうしてもそこまで対策が取りきれていない。もちろん、規制を厳しくして以前よりは随分と借金額は減っているんだけれども。」

ー入管法改正時に騒がれたの失踪の件数が多いことにも繋がりそうですね。

「日本にも最低賃金を下回るような金額で働かせている会社などまだまだある。手取り10万円で借金100万円なんて不可能だろ。生活できるかもわからない金額で。結果的に強制送還のリスクを背負ってでも逃げ出して、失踪するわけだ。」

ー仮に手取り20万円でも、借金を割り引いたら出稼ぎの意味を失いますものね。

「お金を稼ぎに来ているのに、プラマイゼロでは家族に負担を掛けているだけで何も残らないから、そりゃ待遇がいい職場があると聞けば逃げてでもそちらに行きたくなるのは当然だよ。」

ーなるほど。来日までの構造が歪んでいると同時に受け入れ側も採用前に確認する必要がありますね。

「彼らは借金があるとは現地面接では言わないよ。不利になるかもしれないからね。失踪の要因になるし。確認できることは、国の認可を受けて実績がしっかりしているかなどを調べてこちらで判断するしかない。」

ー課題はまだまだ残るようですね。

「このあたりはもう、政治の仕事だからね。我々は法令遵守して仕事の戦力として育てていくしかない。少なくとも技能検定さえ合格すれば5年間は働いてくれるから、今回の入管法改正は歓迎だよ。」

ーなるほど。それでは最後にまとめとして聞いてみたいのですが、外国人労働者に対してこれから採用を検討する企業が増えると思いますが、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。

「まず外国人だからといって不当な差別や待遇をしないこと。これは後々自社のリスクにもなる。5年前位から規制が厳しくなって、違反企業は厚生省に公表されるし、受け入れ停止にもなる。あとは短期で考えずに2年目くらいまでは長い目で見てあげる。そして、本当に外国人労働者を採用するのがベストなのか、それとも事業投資に対して違う選択肢を検討すべきなのかを考えた方がいいね。結局、日本人を採用できるのが費用の面でもマネジメントの面でもいいのは間違いないので、採用の仕方を考え直すのもありかなと。人のこと言えないけど笑」

ーありがとうございます。まだたくさんありそうですが、次回機会を見てまたお伺いしたいと思います。

「もう終わり?また分からない点があれば聞いてくれたらいいよ。自分で監理団体できるんじゃないか位勉強したから笑」

まとめ

外国人技能実習生は実習生から労働力と政府が認めた入管法改正は大きい意味を持ちます。

ただし、安価な労働力と考えてはいけません。むしろ、日本人を採用するよりもグロス(総額)では高いコストになるのは間違いなさそうです。

既存のビジネスモデル、業務フロー、設備などを一度見直してから外国人を真剣に検討する方が企業にとって良い結果になる場合がいい理由が今回のインタビューで少しご理解頂ければ幸いです。

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