前回の続きです。このブログはシリーズものになっております。
第一弾では、高松市中心にある瓦町FLAGの現状について見ていきました。
今回は、では、再建する方法を考えてみます。私見が入る部分もあり、浅い所、深い所がありますが、基本的に1つだけ実施すればいいのではなく、複数を設計した上で琴電が動くことが前提になります。
結論からいうと高いテナント料を払える東京の企業を誘致するのではなく、地元資本のテナントを育てることをすれば、地域から支持され続けることができる商業施設になる唯一の方法です。
全国的な有名なテナントでは継続できない
もともと瓦町FLAG自体の開業当時は、ほとんどが全国各地に店を構えるチェーン展開されたテナントで構成されていました。
地元有力資本では、スーパーきむらと宮脇書店くらいでしょうか。
そのほかは、ほとんど東京をはじめとする都市圏に本社があるような企業が入居していました。
東京に本社を持った企業をテナントに迎えるとテナント料もある程度見込めるので、どの商業施設も誘致したがる傾向にあります。
もちろん、企業やブランドが確立されているために、人を呼び込むことができる側面もあると考えてのことです。
しかし、現実はいくら有名ブランドがあったとしても、継続的に人を集めることができるかというと、全く違う結果として現れてしまいました。
東京にある企業が多くテナントに入っても、地域に与える経済効果というのは正直大きくないのです。
これは単純な話ですが、案外考えられていない点です。いくら売上が上がってもその利益は、東京の本社に送金され地元に与える影響は従業員の所得と、テナント料くらいです。
つまり、いくら高松で売上をあげても企業が高松に再投資することはなく、他の地域の出店にその金は回されます。
重要なので以下繰り返しますね。
ビジネスとしても海外の原料で、海外で製造された商品を海外の業者を通じて輸送し、都市圏にある大手の運送会社に各地域への納品配送を依頼し、瓦町FLAGのテナントを借りて、高松市の方から売上を上げ、数名のスタッフへ給与を支払い、利益は東京本社に納めるわけです。
瓦町FLAG側からすれば、テナント料が入るからいいのではないかと思われるかもしれませんが、その全国的企業が周辺地域の商売を厳しくさせ、撤退し、不動産も空き店舗になり、所得が減り、エリア自体に魅力を失う結果になっているわけです。
魅力のないエリアには人は集まらない、商業エリアとしては致命的で稼ぐことができないようになります。
そうなれば大手企業はすぐに撤退してしまいます。
そして残されたのは、非常に高い維持管理費と空いたテナントスペースだらけというのが現実です。
変化する環境
考え得る理由は多岐に渡り、これが原因だ!というわけではなく複数の要因がそこには存在しているのは間違いなく、これを読まれている方もなんとなく肌感覚で無理だろうと感じてもらえると思います。
ここでは大きな要因と考える2つについて考えていきます。
移動が簡単になることは地方に不利
瓦町FLAGに限らず、それ以前の天満屋やそごうにおいても、不振に終わったのは、瀬戸大橋と明石海峡大橋が都市間競争を生んだということです。
瀬戸大橋の開通によって岡山へわずか1時間で行くことができます。中国地方での中核都市の一つである岡山市では高松と比較できないほど商業施設は充実しています。
明石海峡大橋が開通したことによって、大阪、神戸へのアクセスも簡単になり気軽に日帰りで行ける距離になっています。
本来は、本州から四国への交流人口の増加が見込めると思っていたのが、まさか流出して経済的なダメージを受けるという結果になったわけです。
(懲りずに四国新幹線を目指し経済をー、東京と繋がればー、とか笑えない)
例えば瀬戸大橋のたもとの坂出市、丸亀市は開業数年で壊滅的なダメージを受けて商店街が機能しなくなりました。
高松市もご多分に漏れず、それまで東四国の中心の商業地帯であったにも関わらず衰退を余儀なくされているわけです。
本州連絡橋が開通したことで、大都市圏(大阪)と中規模都市(岡山・神戸)と都市間競争に望まなくても巻き込まれていることは頭に入れておかなくてはいけません。
その上、上記のように東京へ利益は全て入金されるわけですから、現状の路線では、環境的に無理ゲーです。
そして、インターネットの台頭に全く対応できなかった、そして今も同様にできていないことが挙げられます。
商業圏内に大手SC(YouMeタウン)があることにも対抗できず、むしろ真似ごとに近い策しか出せない(圧倒的ノウハウに差があるにも関わらず)
さらに丸亀町のように近隣で本気でまちづくりに関わっている地域があるにも関わらず、参考や協力を仰ぐこともなく独自で経営を進めていったことが、近隣地域でも敗北してしまった結果が現在の姿でしょう。
瓦町FLAGに限らず、全国の地方都市の商業施設ではよくある話です。環境の変化の対応の遅れは、ここで論じても多くのメディア報道や書籍などで、みなさんもある程度ご存じだと思うので詳細は今回は省きます。(要望あれば書きます)
リソースは何か、どう有効に使うか
ここまでは外的環境をざっと見たわけですが、外的環境を変えるということは無駄な努力をしていくだけです。(意外とこれがわかってない人が多い)
数学的に言えば定数と変数です。
定数を変えようとしても前提条件として変えることができないわけです
一方、変数は、あらゆる数字を代入してそのデータを変化させることができるわけです
データというと過去形に感じますが、動的なものと考えて頂ければと思います。
外的環境と内的環境に対し限られたリソースを充てる、この判断を間違えると厳しい結果になりがちです。
リソースは何かを整理してみた
経営には【ヒトモノカネ+(情報)】がリソースとして挙げられます。
ここでは情報は、一旦置いておきます。(マーケティング手法も含まれる場合が多いので)
ヒトに関しては、事業者(琴電)とテナントがリソースとして誕生します。ただし、事業者は実際にはデベロッパーに依頼してテナント管理していることに注意しておきます
実際に現在の所、瓦町FLAGのデベロッパーは伊藤忠アーバンコミュニティに委託していますがリーシングに積極的とは言えないのではないかと感じます。
正しいか不明なので、曖昧にちょっと補足程度で記しますが、高松市が株式を所有しているという話もあるのやら、ないのやら(8Fに市役所のサービスセンターがあるのはその証拠かも)
契約内容までは分かりませんが、委託料を徴収できれば、わざわざ衰退して手がかかる場所よりも経営資産を結果が出る施設に集めるのは当たり前でしょうし、結局リーシングするテナント企業は述べてきたように東京の企業です。
デベロッパーとしては、もちろんテナントが利益を得られる場所に出店を促します(誘致に衰退している場所を紹介するだけでも信用問題です)
もちろん琴電側も働きかけはしているのでしょうが、デベロッパー側からすれば当然、優先順位は低く、そもそも現状の瓦町FLAGをどうにかしようとするメリットがないわけです。
現状維持さえすれば、委託料は稼げますからね。(テナントが少ないから手がかからない)
つまり、事業者自体が存在はしているものの、事業主体が機能しているとは言い難い状態です。リソースとして考えたときに有効性は厳しいと感じます。
モノに関しては、ここではテナント(場所)の提供です。立地やビルは変えることができませんし、むしろ高松市内では路線価からも一等地に近いわけです。駅直結、交通の要所でもあり、モノのリソースと考えた時には申し分ないでしょう。
余談ですが、駐車場が有料だから来ないということを理由にしている意見をたまに聞いたりしますが、魅力があれば多少の駐車場代は払ってでも来ます。
お金を払ってでも来たいと思うのが普通ですし、数百円をケチるような場所であればそれまでと僕は思います。(高松なら北浜アリーがわかりやすいでしょう、有料駐車場前提で小さい店舗が10件程度でも人は集まってきています)
最後にカネです。正直、琴電自体は経営状態に余裕がある方ではありません。新駅(伏石)開業、太田〜仏生山駅までにも新規開業して鉄道・バスのインフラの整備に投資していますから(助成金や補助金はごにょごにょ)、本業に経営資源を充てています
決して、否定的ではなく、社会を支える方向に投資するというのは鉄道会社としては正しい姿だと思います。(個人的にはコトデンバスの廃線が進む、長い目で見て鉄道全線維持できるのか疑問もありますが)
もちろん、交通インフラと商業施設のカネを一緒に考えてはいけません。切り離して考えます。
あくまで瓦町FLAGでの損益を考えると、赤字から脱出を目指す、しかしそこに回すまでの資金がない(あくまで予測)、あっても回収見込みが立たない、維持管理費(駅の保全費用除いても)でもかなり高額になっているはずです。
カネというリソースでは、大きな額は厳しいのは明確です。まずは赤字を垂れ流すのではなく、まず赤字の縮小を目指す方向が一番です。小さく成功を積み重ね、成功が波及していく仕掛ける事業へ転換しないと、全国にある明るい廃墟化で笑うに笑えないものが高松中心地の顔になってしまいます。
都市間競争が激しく、市場環境も厳しいなかで、他の商業施設と同じようなテナントを目指すこれまでの事業モデルから転換して稼げる、そして何よりも市民にしっかり愛され支持される瓦町FLAGへ転換していく方向へ舵を切って欲しいと思います。
今回のまとめ
この記事では、テナントを集めればいいわけではない、経済効果は限られ、地域にとっては時にはデメリットをもたらすことを示してきました。
また、都市間競争をはじめ取り巻く外的環境と内的な環境、そしてリソースの意味を考えてきました。次のシリーズでは、ではどうすればいいのかを個人的に設計しながら意見していきたいと思います。