【飲食関係者必読】書評『俺のイタリアン俺のフレンチ』

今回は、『俺のイタリアン、俺のフレンチ』の書評と感想を書いています。

東京だけでなく、各都市でも多く見られるようになった【俺のシリーズ】の店舗ですが、実はまだ10年も経っていない企業です。

この過剰競争の中に、なぜ短期間で急激に成長したのか、その秘密?が随所に書かれています。

スポンサーリンク
レクタングル大

飲食店関連ビジネス本では群を抜く内容

まず言いたいのは飲食店関係者ならずビジネスに関わるなら必読すべき一冊です。

読みやすく、小難しい本を読むよりも全然、得られる学びがとにかく多い!

これまでの常識を覆す事業モデル、戦略はもちろん、人が何故働くかを学ぶことができます。

ぜひ、手に入れて読んでみてください。

著者紹介

著者である坂本氏は、若い頃は自身の親が経営する会社に入社し頭角を現していきます。しかしながら、様々な障壁があり退社して自分でビジネスを仕掛けていきます。

これまで、10を超える事業を立ち上げていますが、大半は失敗したと語っています。儲けたのはピアノの中古販売くらいだったと。

いきなり成功するというより、失敗しても次々と挑戦すれば、その中からマーケットに支持されるモデルを作ることができるんですね。その中から有名なモノを紹介します。

BOOK OFF

bookoff

有名なのは、BOOK OFF創業者です。

いまや全国チェーンとして中古本市場ではNo.1です。もともと古本屋市場というのは古典や高い歴史的価値のある書籍を扱うものだったようです。いまもそういう店はありますけど、古本といえばまずBOOK OFFを想像しますよね。

創業当時、庶民的な書籍を格安で仕入れて大量に売り捌くというモデルはありそうでなかった、また買取制度自体も普及していないような時代に、リサイクルという市場を作り上げた実績がある人です。

BOOK OFFのビジネスモデル自体は取り立てて新しいモデルではなかったでしょうけども、それを単価の低い本に対してボリュームを持たせることで強みにしていったことは、今回紹介する俺のシリーズでも、応用されている部分は多くあります。

例えばコストに関しても集客すること、単価より回転数を重視している部分では、古本をある程度の仕入れ額でも数を多く持てれば粗利が取れるという考え方が著者から見えます。

通常なら、安く仕入れて高く売るというのがスタンダードなんでしょうけども、それではお客様は感動しない。いかにお客様に驚いてもらい、感動してもらうことができるか。

これがビジネスの本質であると思います。

俺のシリーズ【俺のイタリアン、俺のフレンチ】

oreno

この本のテーマにもなっている「俺の」シリーズの創業者でもあります。

ご存知の方も居るでしょうが、立ち飲みレストランです。

BOOK OFFを退いてからは隠居するつもりだったようですが、それはそれで暇なんでしょう(笑)新たな事業を試みることになります。

しかし、飲食業だけは手を出さないと決めていた著者でしたが、周りの仲間や出会う機会を得て、飲食業をやることになります。

どうせやるならば、これまでとは違うものを生み出すことが著者のモチベーションになるんでしょうね。



事業開発のヒントが多く示されている

飲食店に限らず、様々な事業開発やプロジェクトを生み出す際にもこの本からヒントを得ることができます。

飲食店の常識を覆すモデル

通常の飲食店のビジネスモデルでは、原材料費30〜40%、人件費率30%が当たり前の構造です。いわゆるFLという基準が70%を超えるとどう考えても赤字構造になります。

それが俺のシリーズでは、計算上90%の原価率まで耐えられるといった構造を持っています。

この時点で、変態的な雰囲気を感じるんですけどね(笑)

当然、安く質の良い料理を提供できれば、集客は可能です。

普通に考えて、固定費も計算する上では、ありえない。(これを何回も言わされる本)

一番の驚くは、原価90%でも損益分岐点を越えることができるビジネスモデルだということです。

これは飲食業を生業としてきた人間では想像もできない考え方ですし、仮に計算上では可能だとしても新事業として選択することはまずありえない業態です。

しかし、その仕組みは単純です。

基本的に一等地に出店し、狭い厨房狭い店内で集客をしていくモデルです。来客数をとにかく増加させ、回転させる事業構造となった結果、立ち飲みになったわけです。

加えて価格が抑えられているからといって中途半端な品質ではなく、ホテルや料亭で一流料理人が提供する料理を楽しめるといった、表現するとド肝を抜かれるビジネスモデルです。

この俺のシリーズを次々と実現していくストーリーは、淡々と書かれていますが、1つ1つの項目がキメ細かに書かれています。

  • 仕入れのボリュームを上げていくことで価格交渉を強くする。
  • 厨房導線に無駄を作らない
  • 客席の設計
  • 調理に対してライブ感を出す店舗設計
  • 生演奏を取り入れた演出など

限られたリソースをフルに活かす飲食店ですが、一番本質を突いている表現は【生産性が高い】ということです。

店舗の広さはもちろん、勤務体系、客数回転率、仕入れ額の低減化など提供する品質やサービスは落とさずに高い生産性を生む設計をされている部分をこの本から学べます。

飲食や販売系の仕事は、政府や厚生労働省からも生産性が低い仕事として扱われています。しかし、生産性の向上余地はまだまだあるのではないかと考えさせられる機会になりました。

もちろん、ITの導入などはもちろんですが、それだけでは生産性など劇的に改善できるわけではなく、そもそも事業モデルチェンジを店舗という仕事は求められている時代だなと感想としてはあるわけです。

競争優位に立つポイント

飲食店

飲食業は、もはやオーバーストアすぎます。競争は年々激戦化しています。

ヒトモノカネ情報をフル活用することで高い生産性を生み出していることが競争優位に立つポイントであることがわかります。

人はなぜ働くのかを見つめ直す

立ち飲みスタイルというのは、あまりにも一般大衆的な飲食店の形です。

いまでこそ、若い客層を中心にオシャレな店舗なども増えてきましたが、数年前までは格安でオジサンたちが集うような形態でした。

当然、後に俺のシリーズで働く方々も一流料理人ですから立ち食い、立ち飲みなどで働くなどにはかなりの抵抗感があるわけです。むしろ断ろうとします。

しかし、決められた原価内で決められたメニューをただこなし、お客様の喜ぶ顔も見れないようなホテルや料亭で働き、一流のプロと言われながら収入も、そこまで高くない労働環境でこれまで働いてきた人は、著者の誘いに乗り働くことになるわけです。

このプライドもある、技術もあるような一流の方がモチベーションを持てる立ち飲みとは一体どうかというポイントを考えさせられます。

本当に魅力を感じる仕事環境とは

どれだけ立派なレストランやホテル、料亭で働いていても実は予算やコストの制約が本来作りたい料理を実現できるわけではないということ。

これは原価率の壁があるわけで(飲食だと30〜40%)そのなかでやりくりをしていく必要があるんですが、俺のシリーズでは最大90%でも可能というモデルが料理人に魅力を感じていくわけです。

それも 原価はふんだんに掛けることが競争優位性を構築する最重要ポイントだという点です。

それに気づいた料理人たちが、俺のシリーズで働くことになります。

つまり、料理人自身が作りたい料理を提供できる。お客様の喜ぶ顔を見ながら、制約を気にすることなく品質の高い素材を選び、自分の腕を振るう。

その結果、感動させ口コミやお客様が知り合いを連れて来てお店が繁盛する。それがまたモチベーションを生み出していく、まさにヒトモノカネをフルに回している事業です。

プロには正当な報酬を

一流料理人であっても、雇用されている側の立場の場合、有名なシェフであっても年収は最大でも800万円程度とされています。

俺のシリーズでは1000万円を超える年収を可能にしています。給与が全てではありませんが、正当な評価をされないと人はいつか上を目指さなくなります。夢がなくなるというか。

立ち飲みスタイルのレストランで年収1000万円が可能な事業にするには、高生産性が必須です。ただ、新しく珍しいからヒットしているというものではない証拠です。

確実な成長をしないと無理ですから。(原価と人件費をざっくり計算してみれば一目瞭然)

また、ここでは詳しくは書きませんが、生演奏のサービスもあります。これはお客様へのサービスだけではなく、演奏家の年収が一般的な職よりも低いことへの疑問を投げかけています。

そもそも演奏する場所や機会がなかなか無い、少ない状況です。その場を提供し、お客様も喜び、演奏家も収入を得ていく。店も魅力を増すという、これこそ受け入れられるお店という証拠です。

まとめ

長くなってしまいましたが、一読するに値する良書だと思います。

正直、読むまでは僕自身もそこまで大した期待をして手に取ったわけでもなく、「勢いがある企業がどんな取り組みをしているのか興味があるなあ。」くらいの気持ちでした。

事業構想の常識破壊、人に掛ける想い、そこで働く人が現実にどのように感じ働いているのか、また事業設計を限られたリソースで構築し、回していく。

飲食業の話ではありますが、他業界で働く方にもヒントや学べる内容であることは間違いありません。

スポンサーリンク
レクタングル大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル大